韓米自由貿易協定(FTA)履行法案について、米国議会8月休会前の処理が先送りされる見通しだ。
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アメリカ国内雇用創出の推進策として、議会に対して韓米FTA履行法案の早急な処理を強く求めてきたホワイトハウスが、19日に初めて早期処理に対する悲観的観測を明らかにした。
財界出身で、韓米FTA履行法案処理に最も積極的なウィリアム・デイリーホワイトハウス秘書室長は19日、「議会が韓国等とのFTA履行法案を8月中処理できるかどうか不透明だ」と語った。もちろん「韓米FTA批准を秋まで先延ばしする」という立場をはっきりと表明したわけではないが、従来の立場からは明確に後退した発言だ。
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FTA履行法案提出時期をうかがっているホワイトハウス首脳部が8月中の処理に悲観的ということは、すなわち履行法案提出を急がない意向ともとれる。議会が8月休会前の批准に同意しないならば、あえて履行法案を早期提出する必要性がないためだ。
ホワイトハウスのこのような立場は、韓米FTA批准スケジュールに対する先週の立場と比較すると、いかにも対照的だ。オバマ大統領は、15日の会見で韓米FTA処理の障害物として争点となっているTAA(貿易調整支援)問題の折衝を強く求め、デイリー秘書室長は14日、米商工会議所主催“韓米財界会議”で「8月休会前に議会が行動に出るべきだ」と議会に圧力をかけた。
ホワイトハウスの変化は、米国最大の政局懸案である国債上限増額を契機とした財政赤字縮小交渉の膠着という議会内の実情のためとみられる。
特に、TAA延長案処理について意見の食い違う共和党上院の強硬な態度も難関だが、民主党上院指導部が、財政赤字交渉に全力を注いでおり韓米FTA懸案処理にエネルギーを割く余裕がないと吐露しているという。
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ホワイトハウスは当初、韓米FTA履行法案にTAA延長案を抱き合わせたパッケージ法案を提出し、上院共和党内の離脱票を考慮した“票対決”も辞さないという意向も表明していた。しかし、ヘリー・リ―ド民主党上院院内代表は、以前から議会処理手続をめぐって共和党と合意に到達するまでFTA履行法案提出を先送りするようホワイトハウスに要請してきた。このためホワイトハウスは、上院内の合意を期待して履行法案提出時期をうかがってきた。だがこの合意のための努力も、史上初となるデフォルト(債務償還不履行)事態をめぐる財政赤字交渉という、より大きな“荒波”に巻きこまれ、進展することはなかった。
結局、リ―ド民主党院内代表さえ、先週末TAAに関する意見の食い違い解消のため共和党との交渉に政治力を注いだり、共和党の反対を押し切って突破したりする状況でない、という結論を下したことが明らかになった。
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下院共和党の反対の中、共和党上院のミッチー・マコーネル院内代表とデフォルトを避ける“Bプラン”折衝に到達したリ―ド院内代表としては、韓米FTAと連係させるTAA処理の強行でマコーネル院内代表を刺激してはいけないという判断があったかもしれない。共和党がTAA処理手続に合意しない状態でFTA履行法案をホワイトハウスが一方的に提出すれば、財政赤字縮小交渉妥結の雰囲気にさえ赤信号が灯るということも考慮されたようだ。これに伴い、当分は財政赤字縮小交渉を妥結させて一息ついた後、韓米FTAを秋に先送りする方向に戦略的に判断を下したという分析だ。
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ホワイトハウスとしても、一日も早く財政赤字縮小交渉を妥結させ、韓米FTA批准同意案まで8月休会前に処理を完了するという目標だったが、議会内の状況展開が“二兎を得る”ことが現実的に難しくなり、戦略的後退という形をとったともいえる。
ただし、財政赤字縮小交渉が今週内に電撃的に妥結し、この過程で共和党上院がTAA処理問題についても端緒を開くことができれば、時間はないが8月休会前に韓米FTA履行法案を処理できる可能性も完全に排除することはできない。しかし、ホワイトハウスと議会の全体的な流れは、この可能性をますます薄いものにしている。
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韓米FTA履行法案処理が秋に先送りされると、2012年米大統領選挙とぶつかり、批准同意案処理が危ぶまれるとの観測もあるが、共和党も韓米FTA自体については反対していないため批准自体には問題がない、という意見もあり、展望が錯綜している。
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2011.7.20 連合ニュース