中国で『現代速度』という造語まで登場するほどの急激な成長を遂げた現代・起亜自動車が、今年から生産能力が販売を下回る“供給不足”減少に直面している。このため、同社の急成長にブレーキがかかるのでは、という指摘も出始めている。
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一部の自動車専門家らは、現代起亜車がこれまでの急速な量的成長からいよいよ質的成長に転換する自然な過程である、と分析している。“幸福な悩み”に陥っている現代起亜車、という見方もできるが、今後の状況変化に対して大きな注目が集まっている。
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◆ 現代起亜車、海外工場稼働率100%超
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本紙が独占入手した『現代起亜車 国内・海外工場車種別生産計画』によると、現代起亜車の中国工場は今年、生産能力(60万台)を上回る72万台という生産目標を立てている。これは、人員と設備を1日22時間以上稼働してやっと達成できる量だ。米国工場やインド工場なども、同様に今年の稼働率として100%やそれ以上の目標を掲げている。海外の主要工場が、今年を基点として飽和状態に達したといえそうだ。
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現代起亜車は、2000年の244万台から昨年574万台と、わずか10年で世界販売規模を2.4倍に拡大し、世界の自動車メーカーの中でも最も早い成長を見せた。昨年の販売も、前年比何と24%増。同期間の世界自動車市場成長率(10%)の2.4倍だ。しかし、今年の販売目標は昨年より10%増にとどまり、成長率は顕著に鈍化する見込みだ。
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◆ 年間700万台ラインで一息?
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現代起亜車は、生産能力不足現象をどのように解決するのか。業界では、3つの可能性が論じられている。
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ひとつめは、現代起亜車が、金融危機により市場が停滞した際に生産・販売を果敢に増やして成功したように、今回生産能力を増強するのではなく収益極大化戦略を採るという展望だ。
今年現代起亜車が全体工場稼働率を98%まで引き上げれば、昨年に続いて史上最大の収益を上げる可能性が高い。一般的に固定費負担が大きい自動車工場は、稼働率が70%以下の場合赤字だが、90%を超えれば極めて高い収益を上げることができる。したがって、専門家らは現代起亜車がこの収益をもとに生産能力追加拡充の実弾を確保することに注力するのでは、とみている。
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ふたつめは、当分“質的成長”にのみ集中する戦略だ。
現代起亜車の高位役員は、「来年下半期までに当社中国3工場(40万台)とブラジル工場(10万台)を増設すれば、当社の生産能力は700万台に増える。これら工場の生産効率を極大化すれば、追加増設せずとも年750万台は生産が可能だ」とコメントしている。
これは、ジョン・モング会長が最近「私の在任期間中これ以上工場増設はしない」と発言したことと符合する。現代起亜車のある役員は、「会長は最大750万台までと考えており、それ以上についてはジョン・ウィソン副会長に引き継ぐおつもりのようだ」とコメントしている。
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みっつめは、現代起亜車が工場増設をストップすることだ。現代起亜車の高位経営陣は、トヨタ社が年600~700万台水準から900~1000万台水準まで生産能力を急速に増やしたものの品質管理に隙が生じたとみており、同じ失敗を繰り返さないためにも700万台のラインでとりあえず止めておくのでは、ということのようだ。
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◆ 年800万台体制…「準備は始まった」
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世界自動車業界の競争状況をみると、トヨタ・GMが依然として800~900万台の生産能力を保有しており、フォルクスワーゲンは昨年に販売が700万台を突破した。現代起亜車が世界4位圏の維持や3位圏進出を狙うのならば、工場増設は不可避といえる。
現代起亜車関係者によると、昨年末に同社企画室は「現代起亜車販売推移をみると、年間800万台生産体制を整えなければならない」との報告書を作成した。
また、購買・生産技術部署でも、2013年以降100万台追加増設に関する計画を検討中と伝えられている。IBK投資証券のアナリストは、「そう遠くないうちに、現代起亜車の米国第3工場やインド第3工場計画、または現在工場を持っていない東南アジア地域での完成車工場などの建設計画が発表されるのでは」とコメントした。
2011.2.10 朝鮮日報