韓国企業は、先制的投資と迅速な意思決定により、昨年世界金融危機を乗り越えた。サムスンや現代起亜自動車などは、歴代最高実績とグローバル市場占有率拡大という成果を上げた。
しかし、今年は昨年とは事情が異なるようだ。今年の経済成長率は昨年の6%台から4%程度まで下がる見込みで、国内外景気の小幅下落という壁に立ち向かわねばならない。
ウォン・ドル相場も1,100ウォン程度まで下落するとの予測も、輸出産業にとっては重荷だ。
ただし、業種別に見れば悲喜こもごも。自動車や半導体、機械産業などは今年好調と予測される一方、ディスプレイや石油化学、造船、鉄鋼などは昨年と同等の水準にとどまる見込みだ。
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〈半導体 - スマートフォン・タブレットPCの影響で成長持続〉
半導体は昨年、前年比39.1%上昇の3,020億ドルを記録し、2008年下半期以降続いていた低迷状態から抜け出した。韓国企業は、低迷期に断行した攻撃的投資により世界市場占有率を2009年の11.2%から昨年13.2%まで引き上げた。
今年もやはり、世界半導体市場規模はさらに拡大する見込み。スマートフォンやタブレットPCなどが世界市場で本格的に普及し、半導体市場を牽引するだろう。しかし、中国など新興国の需要がそれほど大きくは回復せず、成長率は前年と比べて鈍化し5%程度にとどまる見込みだ。特に今年は、昨年のワールドカップなど大型イベント特需がなくなり、典型的な『前高後低』現象が予想される。
LCDディスプレイ市場は、昨年の供給過剰状態が今年1分期の半ばまたは後半から改善するものと期待されている。全体的には、LCD需給は小幅の供給過剰が予想されるものの、昨年よりはその幅が減少する見込みだ。今年の面積ベース大型LCD需要は、LCDテレビの成長率鈍化にともない16%程度の増加にとどまる見込みだが、生産能力増加率は18%を超えるものとみられる。
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〈造船 - ボーリング船・コンテナ船発注増〉
造船業界は、2009年市況が底を打った後、昨年受注実績が回復段階に入った。今年もその流れが続き、2007年の最大好調期の水準までとはいかずとも漸次軌道に乗るものと予想される。原油価格上昇は造船発注の青信号。原油価格がバレル当り90ドルを超え、今年は海洋エネルギー開発関連ボーリング船や生産設備船(プラットフォーム)などの発注が続く見込みだ。ただし、昨年にバルク船やタンカーの発注が多かったため、今年はコンテナ船を中心に発注が増えるものと期待されている。中国との受注競争が次第に激化してきており、競争力強化が鍵となるだろう。
鉄鋼産業では、今年の生産量は700万トンに迫り、史上最大を記録する展望だ。内需は建設景気不振にもかかわらず製造業が持続的に成長しており、前年比3.8%増の5,391万5,000トンに達する見込み。これは、2008年(5,857万2,000トン)実績の91%まで回復した数字だ。輸出部門では、ASEAN、インドなど新興国の需要が増え、前年比4.4%増の2,579万5,000トンに達する見込み。粗鋼生産量も11%増の6,431万トンと予想されている。
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〈流通 - 小売市場規模、史上初200兆ウォン突破〉
今年の小売流通市場規模は、史上初めて200兆ウォンを突破するものと予想される。最近相次いで発表された展望報告書によると、2011年小売流通市場は前年比5~6%増の209~211兆ウォン台に達する見込み。業界では、流通業景気が2009年初頭に底を打った後、昨年一段階成長したと判断している。景気低迷によって萎縮した消費心理が、景気回復によって噴出し、流通市場が前年比8%以上拡大したという分析だ。
今年は、世界経済成長率鈍化による国内景気低迷が予想され、伸長率は昨年より多少低くなると予想される。業態別では、コンビニが近距離の利点と商品拡大により飛躍的な成長を遂げると予想されている。売上規模ですでに百貨店市場を抜き去ったオンラインショッピングモールも、持続的に成長する見込み。消費の両極化による百貨店の好況も、今年も続くだろう。
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〈自動車 - 生産台数4.8%増加〉
今年の自動車業界は、韓国-EU自由貿易協定(FTA)や韓米FTAなど外国市場開放を控え、多様な車種開発を通じ内需市場を確保するものとみられる。海外生産基地を中心に輸出も増加する展望だ。
韓国自動車工業協会は、内需と輸出が安定的に増加し、今年の生産台数は前年比4.8%増の440万台に達するものと予想している。
内需市場については、今年自動車メーカーらが大挙して新車を投入する計画もあり、市場規模を前年比3.4%増の150万台と予想。現代自動車は、『ソナタハイブリッド』のほか『グレンジャーHG』を発売、GM大宇はスポーツカー『カマロ』、小型車『アベオ』など合計8種の新車を発売する。
輸出市場については、ウォン高が持続し価格競争力が低下する見込みだが、世界自動車市場が回復傾向を見せているうえ、アメリカ・ヨーロッパなどで韓国車が好調。特に、韓-EU FTAの影響で、前年比5.5%増の290万台で史上最高値を記録する見込みだ。
韓国内での輸入車の善戦も予想される。輸入車はウォン高により価格競争力が確保されるうえ、韓-EU FTAにより排気量2000cc級の多様な新モデルが投入される予定で、前年比30%増の13万台(商用車含む)と予想されている。
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〈携帯電話 - スマートフォン旋風で出荷量10%アップ〉
携帯電話業界は、今年もスマートフォン旋風が続く。昨年の全世界携帯電話市場は、31.1%成長し、2009年のマイナス成長からの反転に成功。先進国はスマートフォン、新興国では低価格の『ノーブランド』携帯が成長を牽引した。
韓国内でもスマートフォン人気が続き、3分期以降携帯電話販売台数の30%以上をスマートフォンが占めた。今年の世界携帯電話市場は、昨年より10%増の14億1,000万台の出荷量を記録する見込みで、昨年よりもさらに早いスピードで成長するだろう。
昨年末700万名に迫った韓国内スマートフォン累積加入者数は、2011年には1,500万名~最大2,000万名まで増えるという予測もある。
全世界的にも、スマートフォンの比率が35%を超えるという予測もある。特に、中・低価格の普及型スマートフォンのラインナップがより一層多様化される見通し。今年は、スマートフォンが多様なユーザー層を対象に普及する年となり、中・低価格スマートフォンの競争が熾烈化するだろう。これにより、韓国内メーカーらも従来の高級型スマートフォンの後続製品とともに普及型スマートフォンのラインナップを多様化し、アプリケーションなどソフトウェア開発力も強化する方針のようだ。
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〈石油化学 - 世界エチレン需要拡大、肯定的展望も〉
今年の石油化学業界は、好材料と悪材料が混在している。昨年史上最大規模のエチレン増設が実施され調整局面に入ったものの、依然として供給過剰感がぬぐえない状態だ。
しかし、中国を除く新興国需要の絶対規模が大きくなっており、増設物量が市場で自然に消化されている。また今年から3~4年間は大規模な設備増設の予定がなく、市況は中長期的には回復傾向を示すものと予想される。特に業界では、今年から世界エチレン需要が拡大するうえ老朽設備の廃棄の可能性も高まっており、肯定的な展望も出されている。
機械産業は、昨年の緩慢な回復傾向は途切れるかもしれないが、成長自体は持続するものと予測される。内需は、需要企業らの投資や老朽設備交換圧力の増大により、着実に持続するとみられるが、増加率は昨年の30%台から今年は10.9%まで低下する見通し。輸出も、世界景気の成長鈍化とEU加盟国の一部の金融不安により、前年比13%程度の増加にとどまるものと予測されている。全体の生産量は、前年比11.2%の増加が予想されている。
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ソウル新聞 2011.1.5